ピボットポイントとは？計算式から実践的なデイトレード手法まで徹底解説
「今日のサポートラインやレジスタンスラインはどこに引けばいいんだろう？」「自分で引いた水平線に自信が持てない…」そんな悩みを抱えているFX初心者の方は多いのではないでしょうか。実は、世界中のプロトレーダーが毎日チェックしている「客観的な価格帯」が存在します。それが今回解説するピボットポイント（Pivot Point）です。
ピボットポイントは、前日の高値・安値・終値から自動的に計算されるため、誰が見ても同じ数値になります。つまり、主観に左右されない「共通の目安」として機能するのです。この記事を読めば、ピボットポイントの計算式の仕組みから、デイトレードでの具体的な活用法まで、初心者の方でもわかりやすく理解できます。ぜひ最後まで読んで、明日からのトレードに役立ててください。
ピボットポイントとは？基本の仕組みを初心者向けに解説
ピボットポイントとは、前日の価格データ（高値・安値・終値）をもとに算出される「本日の基準価格」のことです。もともとは株式市場のフロアトレーダー（立会場で取引する専門家）が、その日の相場の方向性を判断するために使っていた指標でした。現在ではFX市場でも広く活用されており、特にデイトレーダーにとって欠かせないテクニカル指標の一つとなっています。
ピボットポイントの最大の特徴は、計算式が決まっているため、世界中のトレーダーが同じ数値を見ているという点です。自分で引いた水平線は主観が入りますが、ピボットポイントは客観的な数値です。多くの市場参加者が同じラインを意識するからこそ、そのラインで実際に反発や突破が起きやすくなるのです。
ピボットポイントの計算式
ピボットポイントの計算式は非常にシンプルです。基本となるPP（Pivot Point）は、前日の高値・安値・終値を足して3で割るだけで求められます。
| ライン名 | 計算式 | 役割 |
|---|---|---|
| PP（ピボットポイント） | （前日高値 + 前日安値 + 前日終値）÷ 3 | 本日の基準価格 |
| R1（レジスタンス1） | （PP × 2）− 前日安値 | 第1抵抗線 |
| R2（レジスタンス2） | PP +（前日高値 − 前日安値） | 第2抵抗線 |
| R3（レジスタンス3） | 前日高値 + 2 ×（PP − 前日安値） | 第3抵抗線 |
| S1（サポート1） | （PP × 2）− 前日高値 | 第1支持線 |
| S2（サポート2） | PP −（前日高値 − 前日安値） | 第2支持線 |
| S3（サポート3） | 前日安値 − 2 ×（前日高値 − PP） | 第3支持線 |
計算式を見ると難しそうに感じるかもしれませんが、安心してください。TradingViewやMT4/MT5などのチャートツールには、ピボットポイントを自動で表示してくれるインジケーターが標準搭載されています。実際のトレードでは、計算式を覚える必要はありません。大切なのは「なぜこの計算式が使われるのか」という理論的背景を理解することです。
なぜプロトレーダーはピボットを重視するのか
ピボットポイントがプロトレーダーに重視される理由は、大きく3つあります。
1つ目は「先行指標」として機能する点です。移動平均線やMACDなどの多くのテクニカル指標は、過去の価格データから計算される「遅行指標」です。一方、ピボットポイントは前日のデータから「本日の目安」を事前に算出するため、相場が動く前にサポート・レジスタンスを予測できます。
2つ目は「自己実現的予言」が働く点です。多くのトレーダーがピボットポイントを見ているため、「このラインで反発するだろう」という期待が集まります。その結果、実際にそのライン付近で売買が活発になり、予測通りの値動きが起きやすくなるのです。
3つ目は「客観性がある」点です。自分で引いた水平線は「本当にここで合っているのか？」と不安になりがちですが、ピボットポイントは計算式で決まるため、迷いがありません。特にFX初心者の方にとって、この客観性は大きな安心材料になります。
ピボットの各ラインの役割と見方
ピボットポイントは、中心となるPP（Pivot Point）を基準に、上に3本のレジスタンスライン（R1・R2・R3）、下に3本のサポートライン（S1・S2・S3）が配置されます。合計7本のラインがその日の「価格帯の地図」を形成するイメージです。それぞれのラインには異なる特徴があり、使い方も変わってきます。
PP（ピボットポイント）の意味
PP（Pivot Point）は、その日の相場の「中心軸」となるラインです。価格がPPより上にあれば「買い優勢」、PPより下にあれば「売り優勢」と判断する目安になります。
デイトレードでは、PPを「トレンドの分岐点」として活用します。例えば、東京市場の朝にPPより上でスタートした場合、その日は上昇トレンドが続きやすい傾向があります。逆に、PPを割り込んで始まった日は、下落トレンドが意識されやすくなります。
ただし、PPだけで売買判断をするのは危険です。PPはあくまで「本日の基準価格」であり、明確なエントリーシグナルではありません。PPを超えたからといってすぐに買いエントリーするのではなく、他のインジケーターやプライスアクションと組み合わせて判断することが大切です。
S1・S2・S3（サポートライン）の特徴
S1・S2・S3は、価格が下落した際に「支えられやすい」とされるサポートラインです。数字が大きくなるほど（S1→S2→S3）、PPから離れた位置に配置されます。
S1（第1サポート）は、通常の値動きで最も頻繁にテストされるラインです。デイトレードでは、価格がS1まで下落してきた際に「押し目買い」のチャンスとして注目されます。統計的には、1日の値動きの約70%がS1とR1の間に収まると言われています。
S2（第2サポート）は、S1を割り込んだ場合の次のターゲットです。S2まで下落するのは、やや強い売り圧力がかかっている状況を示します。S1で反発せずにS2まで到達した場合は、トレンド転換の可能性も視野に入れる必要があります。
S3（第3サポート）は、強いトレンド相場でしか到達しない「極端なライン」です。S3まで下落するのは、重要な経済指標の発表や予期せぬニュースがあった場合など、ボラティリティが非常に高い日に限られます。通常のデイトレードでは、S3を目標にすることは稀です。
R1・R2・R3（レジスタンスライン）の特徴
R1・R2・R3は、価格が上昇した際に「抵抗を受けやすい」とされるレジスタンスラインです。サポートラインと対称的な関係にあります。
R1（第1レジスタンス）は、上昇トレンドにおける最初の利確目標として使われます。買いポジションを持っている場合、R1に到達したら一部を利確するという戦略が一般的です。また、逆張りトレーダーはR1で売りエントリーを検討することもあります。
R2（第2レジスタンス）は、R1を突破した場合の次のターゲットです。R2まで到達するには、ある程度の買い圧力が必要なため、R2を明確に超えた場合は「強い上昇トレンド」と判断できます。
R3（第3レジスタンス）は、S3と同様に極端なラインです。R3まで上昇するのは、強烈な上昇トレンドが発生している日に限られます。R3に到達した場合は、過熱感から反落する可能性も高いため、新規の買いエントリーは慎重になるべきです。
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ピボットポイントの基本を理解したところで、実際のデイトレードでどのように活用するかを解説します。ピボットは「順張り」「逆張り」どちらの戦略にも使える汎用性の高い指標です。ご自身のトレードスタイルに合った手法を選んでください。
ピボットを使った順張り戦略
順張り戦略は、トレンドの方向に沿ってエントリーする手法です。ピボットを使った順張りでは、PPをトレンド判断の基準にします。
買いエントリーの条件
- 価格がPPより上に位置している
- 価格がR1を上抜けした
- R1がサポートに転換したことを確認（リテスト）
具体的には、まず価格がPPより上にある状態で「買い目線」を確定します。次に、価格がR1を上抜けするのを待ちます。R1を上抜けした直後に飛び乗るのではなく、一度R1まで戻ってきて反発したこと（リテスト）を確認してからエントリーするのがポイントです。利確目標はR2、損切りはPPの少し下に設定します。
売りエントリーの条件
- 価格がPPより下に位置している
- 価格がS1を下抜けした
- S1がレジスタンスに転換したことを確認（リテスト）
売りの場合は買いの逆です。PPより下で推移していることを確認し、S1を下抜け後のリテストでエントリーします。利確目標はS2、損切りはPPの少し上に設定します。
ピボットを使った逆張り戦略
逆張り戦略は、サポートやレジスタンスでの反発を狙う手法です。ピボットの各ラインは「反発ポイント」として機能しやすいため、逆張りとの相性が良いです。
S1での買いエントリー（逆張り）
- 価格がS1付近まで下落してきた
- S1でローソク足の反転パターン（ピンバー、包み足など）が出現
- RSIが30以下（売られすぎ）を示している
逆張りの場合は、ピボットのラインだけでなく、プライスアクションやオシレーター系指標との組み合わせが重要です。S1に到達しただけでエントリーするのではなく、「反発の根拠」を複数確認してからエントリーすることで、ダマシを回避できます。
利確目標はPP、損切りはS2の少し下に設定します。逆張りはリスクが高いため、ロットサイズを通常より小さくすることをおすすめします。
ピボットと他のインジケーターの組み合わせ
ピボットポイント単独で使うよりも、他のテクニカル指標と組み合わせることで精度が向上します。特に相性が良いのは以下の指標です。
移動平均線との組み合わせ
20期間や50期間の移動平均線とピボットを併用します。例えば、価格がPPより上にあり、かつ20EMAより上にある場合は「強い買いシグナル」と判断できます。ピボットと移動平均線が同じ方向を示している時だけエントリーするルールを設けると、勝率が向上します。
RSIとの組み合わせ
RSIはオシレーター系の代表的な指標で、「買われすぎ」「売られすぎ」を判断するのに役立ちます。S1やS2に到達した際に、RSIが30以下を示していれば「売られすぎからの反発」を狙えます。逆に、R1やR2でRSIが70以上なら「買われすぎからの反落」を警戒します。
フィボナッチ・リトレースメントとの組み合わせ
ピボットのラインとフィボナッチの38.2%や61.8%のラインが重なるポイントは、特に強力なサポート・レジスタンスになります。複数の根拠が重なる価格帯は「コンフルエンス（合流点）」と呼ばれ、多くのトレーダーが注目するため、反発や突破が起きやすくなります。
ピボット分析の注意点とよくある失敗
ピボットポイントは便利な指標ですが、万能ではありません。初心者がやりがちな失敗パターンと、ピボットが機能しにくい相場環境について解説します。
ピボットが機能しにくい相場環境
強いトレンド相場
一方向に強いトレンドが発生している場合、ピボットのサポートやレジスタンスは簡単に突破されてしまいます。例えば、重要な経済指標の発表直後や、要人発言でトレンドが加速している場面では、ピボットでの逆張りは危険です。「ピボットのラインは絶対ではない」ということを常に意識してください。
ボラティリティが極端に低い相場
逆に、値動きがほとんどないレンジ相場では、価格がPP付近でウロウロするだけで、S1やR1に到達しないこともあります。このような相場では、ピボットを使ったトレードは見送るのが賢明です。
週明けの月曜日
ピボットポイントは「前日」のデータをもとに計算されますが、月曜日の場合は「金曜日」のデータが使われます。週末に大きなニュースがあった場合、月曜日のピボットは実態と乖離していることがあります。月曜日はピボットの信頼性がやや低下する点に注意してください。
時間足とピボットの関係
ピボットポイントは「日足」をベースに計算されるのが一般的ですが、週足や月足ベースのピボットも存在します。
デイリーピボット（日足ベース）は、スキャルピングやデイトレードに最適です。1時間足や15分足のチャートに表示して、その日の売買判断に使います。
ウィークリーピボット（週足ベース）は、スイングトレードに適しています。数日間ポジションを保有するトレーダーは、週足ベースのピボットを意識すると良いでしょう。
マンスリーピボット（月足ベース）は、長期的なサポート・レジスタンスとして機能します。大きなトレンドの転換点を探る際に参考になります。
初心者の方は、まずデイリーピボットをマスターすることをおすすめします。デイリーピボットに慣れてきたら、ウィークリーやマンスリーも併用してみてください。複数の時間軸のピボットが重なるポイントは、特に強力なサポート・レジスタンスになります。
よくある失敗パターン
ピボットラインだけでエントリーする
「S1に到達したから買い」「R1に到達したから売り」というように、ピボットラインだけを根拠にエントリーするのは危険です。必ずプライスアクションや他の指標で「反発の兆候」を確認してからエントリーしてください。
損切りを置かない
「ピボットで反発するはず」と過信して、損切りを置かないトレーダーがいます。ピボットは「反発しやすいポイント」であって、「必ず反発するポイント」ではありません。S1で買いエントリーした場合は、S2の下に損切りを置くなど、必ずリスク管理を行ってください。
ニューヨーク終値の設定を確認しない
ピボットの計算に使う「終値」は、一般的にニューヨーク市場の終値（日本時間の午前6時または7時）が基準です。しかし、チャートツールによっては異なるタイムゾーンが設定されていることがあります。ピボットの数値がおかしいと感じたら、チャートのタイムゾーン設定を確認してください。
まとめ
この記事では、FXのピボットポイントについて、計算式の仕組みから実践的なデイトレード手法まで解説しました。最後に、重要なポイントをまとめます。
- ピボットポイントは前日の高値・安値・終値から計算される「客観的な価格帯」
- 世界中のトレーダーが同じ数値を見ているため、自己実現的予言が働きやすい
- PP（ピボットポイント）はその日のトレンド判断の基準となる
- S1・R1は最も頻繁にテストされるライン、S3・R3は極端な相場でしか到達しない
- 順張りではPPを基準にトレンド方向を確認、逆張りではサポート・レジスタンスでの反発を狙う
- 移動平均線やRSIなど、他の指標と組み合わせることで精度が向上する
- 強いトレンド相場や低ボラティリティ相場では機能しにくい
ピボットポイントは、FX初心者の方でも比較的使いやすいテクニカル指標です。まずはTradingViewやMT4/MT5でピボットインジケーターを表示し、過去のチャートでどのように機能しているかを確認してみてください。実際のトレードで使う前に、デモトレードで練習することをおすすめします。
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