RSIの見方と使い方|買われすぎ・売られすぎの判断基準をわかりやすく解説
「RSIが70を超えたら売り」「30を下回ったら買い」——FXの解説でよく見かけるこのフレーズ。でも、実際にその通りにエントリーしてみたら、価格がさらに上昇(下落)して損切りになった経験はありませんか?
RSI(Relative Strength Index:相対力指数)は、多くのトレーダーが使う人気のテクニカル指標です。しかし、「買われすぎ・売られすぎ」という言葉の本当の意味を理解せずに使うと、思わぬ損失につながります。
この記事では、FX初心者の方にもわかりやすく、RSIの正しい見方と実践的な使い方を解説します。単なる数値の読み方だけでなく、「なぜその数値が意味を持つのか」という仕組みから、プロも活用するダイバージェンスの見つけ方まで、しっかりお伝えしていきます。
RSIとは?初心者にもわかる基本の仕組み
RSI(Relative Strength Index)は、日本語で「相対力指数」と呼ばれるオシレーター系のテクニカル指標です。1978年にJ・ウェルズ・ワイルダー・ジュニア氏によって開発されました。
RSIが教えてくれるのは、「現在の価格が、過去の一定期間と比べてどれくらい上昇(または下落)の勢いがあるか」ということです。0から100の数値で表示され、数値が高いほど上昇の勢いが強く、低いほど下落の勢いが強いことを示します。
RSIの計算式と「相対力」の意味
RSIの計算式は以下の通りです。
RSI = 100 −(100 ÷(1 + RS))
ここで「RS(相対力)」は、一定期間の平均上昇幅を平均下落幅で割った値です。
RS = 一定期間の平均上昇幅 ÷ 一定期間の平均下落幅
たとえば、過去14日間で「上昇した日の値幅の平均」が10pips、「下落した日の値幅の平均」が5pipsだった場合、RS=10÷5=2となり、RSI=100−(100÷3)≒66.7となります。
この計算式が意味するのは、「過去の値動きのうち、上昇がどれくらいの割合を占めているか」ということ。RSIが70なら「過去の値動きの約70%が上昇方向だった」と解釈できます。だから「買いの勢いが強すぎる=買われすぎ」と判断されるわけです。
RSIが示す数値の読み方
RSIの数値は0から100の間で推移し、一般的に以下のように解釈されます。
| RSIの数値 | 一般的な解釈 | 相場の状態 |
|---|---|---|
| 70以上 | 買われすぎ | 上昇の勢いが強く、反落の可能性 |
| 50付近 | 中立 | 買いと売りの勢いが拮抗 |
| 30以下 | 売られすぎ | 下落の勢いが強く、反発の可能性 |
ただし、ここで重要な注意点があります。「買われすぎ」は「これから必ず下がる」という意味ではありません。あくまで「過去と比較して上昇の勢いが強い状態」を示しているだけです。この違いを理解していないと、RSIを使った売買で失敗しやすくなります。
RSIの見方|買われすぎ・売られすぎの判断基準
RSIの基本的な見方を理解したところで、実際のチャートでどう判断すればよいのかを詳しく解説します。
70以上で買われすぎ、30以下で売られすぎ
RSIの最も基本的な使い方は、70と30のラインを基準にした売買判断です。
- RSIが70を上回ったら「買われすぎ」→ 売りを検討
- RSIが30を下回ったら「売られすぎ」→ 買いを検討
この考え方の背景には、「行き過ぎた相場は元に戻る」という平均回帰の法則があります。上昇しすぎた価格はいずれ調整で下がり、下落しすぎた価格はいずれ反発する——という相場の性質を利用した手法です。
しかし、実際の相場では「RSIが70を超えてもさらに上昇し続ける」「30を下回ってもさらに下落する」ということが頻繁に起こります。これがRSIの「ダマシ」です。
RSIの数値だけで売買してはいけない理由
RSIが70を超えた瞬間に売り、30を下回った瞬間に買う——この単純な手法が機能しない理由は、RSIが「勢い」を測る指標だからです。
強いトレンドが発生している時、RSIは長期間にわたって70以上(または30以下)に張り付くことがあります。たとえば、米ドル円が強い上昇トレンドにある時、RSIは80や90に達しても、価格はさらに上昇し続けることがあります。
これは「勢いが強い」という事実を正しく反映しているだけで、RSIが間違っているわけではありません。問題は、「買われすぎ=すぐに下がる」と誤解してしまうことにあります。
RSIを使う際は、必ず以下の点を確認してください。
- 現在の相場がトレンド相場かレンジ相場か
- 上位足(日足や4時間足)のトレンド方向
- 他のテクニカル指標や価格の動きとの整合性
トレンド相場とレンジ相場でのRSIの違い
RSIの効果は、相場の状態によって大きく変わります。
レンジ相場(横ばい相場)の場合
価格が一定の範囲内で上下動を繰り返すレンジ相場では、RSIは非常に有効に機能します。70を超えたら売り、30を下回ったら買いという基本戦略が比較的うまくいきやすい環境です。
トレンド相場の場合
明確な上昇トレンドや下落トレンドが発生している時、RSIの逆張りシグナルは危険です。上昇トレンド中にRSIが70を超えたからといって売りを仕掛けると、トレンドに逆らうことになり、大きな損失につながる可能性があります。
トレンド相場でRSIを使う場合は、トレンド方向への押し目買い・戻り売りの判断材料として活用するのが効果的です。たとえば、上昇トレンド中にRSIが50付近まで下がった時を押し目買いのチャンスと捉える、といった使い方です。
[PR] TradingView チャート 無料プランあり!RSIの使い方|実践的なトレード手法
ここからは、RSIを使った具体的なトレード手法を紹介します。初心者の方でも実践しやすい方法から、応用的な使い方まで解説していきます。
レンジ相場での逆張りエントリー
RSIが最も威力を発揮するのは、レンジ相場での逆張りトレードです。
買いエントリーの条件
- 相場がレンジ状態であることを確認(価格が一定範囲内で推移)
- RSIが30以下に低下
- RSIが30を下から上に抜ける(反転の兆候)
- レンジ下限付近でサポートが確認できる
売りエントリーの条件
- 相場がレンジ状態であることを確認
- RSIが70以上に上昇
- RSIが70を上から下に抜ける(反転の兆候)
- レンジ上限付近でレジスタンスが確認できる
ポイントは、RSIが極端な数値に達した瞬間ではなく、「反転の兆候」が見えてからエントリーすることです。RSIが30を下回った時点で買うのではなく、30から反転して上昇し始めてから買う方が、ダマシを避けやすくなります。
トレンド相場での押し目・戻り目判断
トレンド相場では、RSIを逆張りではなく、トレンドフォローの補助指標として使います。
上昇トレンドでの押し目買い
上昇トレンド中、価格が一時的に下落してRSIが40〜50付近まで下がった時が、押し目買いのチャンスとなることがあります。上昇トレンドでは、RSIが30まで下がることは稀で、50付近で反発することが多いためです。
下降トレンドでの戻り売り
下降トレンド中、価格が一時的に上昇してRSIが50〜60付近まで上がった時が、戻り売りのチャンスとなることがあります。下降トレンドでは、RSIが70まで上がることは稀で、50付近で頭打ちになることが多いです。
50ラインを使ったトレンド方向の確認
RSIの50ラインは、相場の方向性を判断する際に重要な基準となります。
- RSIが50より上で推移 → 上昇の勢いが優勢(買い目線)
- RSIが50より下で推移 → 下落の勢いが優勢(売り目線)
この考え方を使えば、「今は買いを狙うべきか、売りを狙うべきか」という基本的な方向性を判断できます。RSIが50を上抜けたら買い目線に切り替え、50を下抜けたら売り目線に切り替える——というシンプルな方法も、初心者の方にはおすすめです。
ダイバージェンスとは?RSIで見つける反転サイン
RSIの使い方の中で、最も強力とされるのが「ダイバージェンス」の活用です。ダイバージェンスとは、価格の動きとRSIの動きが逆行する現象のことで、トレンド転換のサインとして注目されます。
強気のダイバージェンス(上昇転換のサイン)
強気のダイバージェンス(ブリッシュ・ダイバージェンス)は、下落トレンドの終わりに現れることがある反転サインです。
強気のダイバージェンスの条件
- 価格が安値を更新している(より低い安値を形成)
- RSIは安値を更新していない(より高い安値を形成)
つまり、価格は下がり続けているのに、RSIは徐々に上がってきている状態です。これは「価格は下がっているけれど、下落の勢いは弱まっている」ことを示唆しています。
この状態が確認できたら、下落トレンドが終わり、上昇に転じる可能性があると判断できます。ただし、ダイバージェンスが出たからといってすぐに買いエントリーするのではなく、価格が実際に反転の動きを見せてからエントリーする方が安全です。
弱気のダイバージェンス(下落転換のサイン)
弱気のダイバージェンス(ベアリッシュ・ダイバージェンス)は、上昇トレンドの終わりに現れることがある反転サインです。
弱気のダイバージェンスの条件
- 価格が高値を更新している(より高い高値を形成)
- RSIは高値を更新していない(より低い高値を形成)
価格は上がり続けているのに、RSIは徐々に下がってきている状態です。これは「価格は上がっているけれど、上昇の勢いは弱まっている」ことを示唆しています。
この状態が確認できたら、上昇トレンドが終わり、下落に転じる可能性があると判断できます。
ダイバージェンスの注意点と「ダマシ」対策
ダイバージェンスは強力なサインですが、100%の精度で機能するわけではありません。以下の点に注意してください。
ダイバージェンスが「ダマシ」になるケース
- 強いトレンドが継続している場合、ダイバージェンスが出ても反転せず、トレンドが続くことがある
- ダイバージェンスから実際の反転まで、かなりの時間がかかることがある
- 小さな時間足では、ダイバージェンスの信頼性が低くなる
ダマシを減らすためのポイント
- 4時間足や日足など、大きな時間足でダイバージェンスを確認する
- ダイバージェンス単独ではなく、サポート・レジスタンスなど他の根拠と組み合わせる
- 価格が実際に反転の動きを見せてからエントリーする
RSIの設定値|期間は14がベスト?
RSIのデフォルト設定は「期間14」ですが、この設定を変更することで、RSIの感度を調整できます。
期間14(デフォルト)の特徴
開発者のワイルダー氏が推奨した「14」という期間は、多くのトレーダーが使用している標準的な設定です。
- バランスの取れた感度で、ダマシが比較的少ない
- 多くのトレーダーが同じ設定を見ているため、サインが機能しやすい
- デイトレードからスイングトレードまで幅広く対応
初心者の方は、まずこのデフォルト設定で使い始めることをおすすめします。
期間を短く(9)した場合の特徴
期間を9などに短くすると、RSIの動きが敏感になります。
- 価格の変化に素早く反応する
- シグナルの発生頻度が増える
- ダマシも増えやすくなる
- スキャルピングなど短期トレードに向いている
期間を長く(21以上)した場合の特徴
期間を21や25などに長くすると、RSIの動きが緩やかになります。
- 価格の変化への反応が遅くなる
- シグナルの発生頻度が減る
- ダマシが減り、より信頼性の高いシグナルが得られやすい
- スイングトレードなど中長期トレードに向いている
| 期間設定 | 感度 | 向いているスタイル |
|---|---|---|
| 9(短期) | 高い(敏感) | スキャルピング、短期デイトレード |
| 14(標準) | 中程度 | デイトレード、スイングトレード |
| 21〜25(長期) | 低い(緩やか) | スイングトレード、ポジショントレード |
どの設定が「正解」というわけではありません。自分のトレードスタイルに合わせて調整し、検証を重ねながら最適な設定を見つけていきましょう。
まとめ|RSIを使いこなすためのポイント
RSIは、相場の「勢い」を数値化して教えてくれる便利なテクニカル指標です。この記事で解説したポイントを振り返りましょう。
- RSIは0〜100の数値で、上昇・下落の勢いの強さを表す
- 70以上で「買われすぎ」、30以下で「売られすぎ」が基本的な判断基準
- ただし「買われすぎ=すぐ下がる」ではないことを理解する
- レンジ相場では逆張り、トレンド相場では押し目・戻り目判断に活用
- ダイバージェンスはトレンド転換の強力なサインになりうる
- 他の指標やサポート・レジスタンスと組み合わせて使う
RSIは単独で使うよりも、他のテクニカル分析と組み合わせることで、より精度の高い判断ができるようになります。まずはデモトレードでRSIの動きを観察し、どのような場面で機能しやすいのかを体感してみてください。
焦らず、一つずつ理解を深めていけば、RSIはあなたのトレードを助ける強力なツールになってくれるはずです。
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※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。FX取引にはリスクが伴い、元本を失う可能性があります。投資判断は必ずご自身の責任で行ってください。