酒田五法とは?三兵・三空・三山など5つのローソク足パターンをわかりやすく解説
「ローソク足の組み合わせパターンを覚えたいけど、種類が多すぎて何から手をつければいいかわからない…」そんな悩みを抱えていませんか。実は、世界中のトレーダーが使っているチャートパターンの多くは、江戸時代の日本で生まれた「酒田五法」がルーツになっています。
酒田五法をマスターすれば、ローソク足の並びを見るだけで「今がトレンドの転換点なのか」「まだ上昇(下落)が続くのか」を判断できるようになります。しかも、たった5つの基本パターンを覚えるだけで、相場の流れを読む力が格段にアップするのです。
この記事では、FX初心者の方にもわかりやすく、酒田五法の基本から実践的な使い方まで徹底解説します。江戸時代から受け継がれてきた「相場の知恵」を、あなたのトレードに活かしてみましょう。
酒田五法とは?江戸時代から伝わる相場分析の原点
酒田五法(さかたごほう)とは、江戸時代に山形県酒田市で活躍した相場師・本間宗久(ほんまそうきゅう)が考案したとされるローソク足分析の手法です。「三山」「三川」「三空」「三兵」「三法」という5つの基本パターンから構成されており、ローソク足チャートを使った相場分析の原点ともいえる存在です。
本間宗久と酒田五法の歴史
本間宗久は1724年に現在の山形県酒田市で生まれ、大坂(現在の大阪)の堂島米会所で米相場の取引を行いました。彼は相場の値動きを記録・分析し、パターン化することで莫大な利益を上げたと伝えられています。
当時の米相場は現代の先物取引に近い仕組みで運営されており、価格変動を予測することが富を築く鍵でした。本間宗久が編み出した分析手法は「酒田罫線」と呼ばれ、後に「酒田五法」として体系化されました。
興味深いのは、この手法が約300年経った現代でも世界中のトレーダーに使われているという点です。海外では「Japanese Candlestick Patterns」として知られ、ウォール街のプロトレーダーも参考にしています。
なぜ現代のFXでも通用するのか
「江戸時代の手法が、なぜ現代のFX市場で使えるの?」と疑問に思う方もいるでしょう。その答えは、相場を動かしているのが「人間の心理」だからです。
米相場であれFX市場であれ、価格を動かしているのは人間の「欲」と「恐怖」です。「もっと上がるかもしれない」という期待、「これ以上損したくない」という恐れ。こうした感情は時代を超えて普遍的なものであり、チャート上に同じようなパターンとして現れます。
酒田五法は、まさにこの人間心理の集大成をパターン化したものです。だからこそ、テクノロジーが進化した現代においても、その有効性が失われていないのです。
酒田五法の基本「五法」を完全解説
ここからは、酒田五法を構成する5つの基本パターンを順番に解説していきます。それぞれのパターンが「なぜ機能するのか」という理論的背景も含めて説明しますので、単なる暗記ではなく、本質を理解しながら読み進めてください。
三山(さんざん)- トリプルトップの原型
三山とは、上昇トレンドの天井圏で3回高値をつけた後に下落に転じるパターンです。現代のテクニカル分析では「トリプルトップ」と呼ばれるチャートパターンの原型にあたります。
このパターンが示す相場心理は次のとおりです。1回目の高値で「そろそろ天井かも」と考える人が出始め、売りが入ります。しかし、まだ買いの勢いが残っているため、再び上昇して2回目の高値をつけます。ここでも売りが入り、3回目の挑戦でも高値を更新できなかった場合、「これ以上は上がらない」という認識が市場に広がり、本格的な下落が始まるのです。
三山の中でも特に有名なのが「三尊天井(さんぞんてんじょう)」です。これは中央の山が最も高く、両側の山がやや低い形状で、海外では「ヘッドアンドショルダー」として知られています。三尊天井は非常に信頼性の高い反転サインとして、世界中のトレーダーに重視されています。
三川(さんせん)- トリプルボトムの原型
三川は三山の逆パターンで、下落トレンドの底値圏で3回安値をつけた後に上昇に転じるパターンです。現代では「トリプルボトム」と呼ばれています。
下落が続く中で、3回にわたって同じ水準で下げ止まるということは、その価格帯に強力な買い支え(サポート)が存在することを意味します。売り手が何度攻めても突破できなかった結果、「これ以上は下がらない」という認識が広がり、買い戻しや新規の買いが入って上昇に転じるのです。
三川の代表的なパターンとして「逆三尊(ぎゃくさんぞん)」があります。中央の谷が最も深く、両側の谷がやや浅い形状で、海外では「インバース・ヘッドアンドショルダー」と呼ばれます。底値からの反転サインとして非常に信頼性が高いパターンです。
三空(さんくう)- 窓開けの連続パターン
三空とは、ローソク足とローソク足の間に「窓(ギャップ)」が3回連続で開くパターンです。窓とは、前日の終値と当日の始値の間に価格差(空白)ができることを指します。
上昇方向に3回連続で窓が開く「三空踏み上げ(さんくうふみあげ)」は、相場が過熱している証拠です。買いが買いを呼ぶ状態が続いていますが、これは同時に「買いたい人がほぼ買い尽くした」状態でもあります。そのため、三空踏み上げの後は反落しやすいとされています。
逆に、下落方向に3回連続で窓が開く「三空叩き込み(さんくうたたきこみ)」は、売りが売りを呼ぶパニック状態を示しています。しかし、売りたい人がほぼ売り尽くした状態でもあるため、その後は反発しやすいのです。
ただし、FX市場では株式市場と違い、平日は24時間取引が行われるため、窓が開くことは比較的少なめです。週明けの月曜日朝や、重大なニュースがあった時に窓が開くことがあるので、その際には三空のパターンを意識してみてください。
三兵(さんぺい)- トレンド継続のサイン
三兵とは、同じ方向のローソク足(陽線または陰線)が3本連続で並ぶパターンです。トレンドの発生や継続を示す重要なサインとして知られています。
陽線が3本連続で並ぶパターンを「赤三兵(あかさんぺい)」と呼びます。これは強い買いの勢いを示しており、上昇トレンドの始まりや継続を暗示します。特に、底値圏で赤三兵が出現した場合は、トレンド転換の可能性が高いとされています。
逆に、陰線が3本連続で並ぶパターンを「黒三兵(くろさんぺい)」または「三羽烏(さんばがらす)」と呼びます。これは強い売りの勢いを示しており、下落トレンドの始まりや継続を暗示します。天井圏で黒三兵が出現した場合は、下落への転換サインとして警戒が必要です。
三兵のパターンで重要なのは、各ローソク足が「しっかりとした実体」を持っていることです。ヒゲが長すぎたり、実体が小さすぎたりする場合は、勢いが弱まっている可能性があるため注意しましょう。
三法(さんぽう)- 休むも相場
三法は「上げ三法」と「下げ三法」から構成され、相場の休息期間(調整局面)を経てトレンドが再開するパターンを示しています。
上げ三法は、大きな陽線の後に小さなローソク足(陽線・陰線問わず)が2〜3本続き、その後に再び大きな陽線が出現するパターンです。最初の大きな陽線で上昇した後、一時的に調整(小休止)が入り、その後に上昇トレンドが再開することを示しています。
下げ三法は上げ三法の逆で、大きな陰線の後に小さなローソク足が続き、再び大きな陰線が出現するパターンです。下落トレンドの継続を示しています。
三法のパターンは、相場格言「休むも相場」を体現しています。トレンドは一直線に進むわけではなく、必ず調整期間を挟みながら進行します。この調整期間を見極めることで、トレンドに乗り遅れた場合でも、押し目買い(戻り売り)のチャンスを捉えることができるのです。
[PR] TradingView チャート 無料プランあり!実践で使える酒田五法の応用パターン
酒田五法の基本を理解したところで、次は実際のトレードで活用するための応用パターンと注意点を解説します。パターンを「見つける」だけでなく、「正しく判断する」ためのポイントを押さえましょう。
赤三兵と黒三兵の見分け方
赤三兵と黒三兵を実際のチャートで見つける際には、いくつかの条件を確認することが重要です。
まず、各ローソク足の「実体の大きさ」に注目してください。理想的な三兵パターンでは、3本のローソク足がほぼ同じ大きさの実体を持っています。1本目より2本目、2本目より3本目と実体が小さくなっていく場合は、勢いが衰えているサインです。このような形状は「赤三兵の先詰まり」と呼ばれ、上昇力の低下を示唆します。
次に、「上ヒゲの長さ」にも注意しましょう。赤三兵で各ローソク足に長い上ヒゲがついている場合、高値圏での売り圧力が強いことを意味します。これは上昇の継続力に疑問符がつくパターンです。
また、三兵が出現した「位置」も重要です。底値圏で出現した赤三兵は信頼性が高いですが、すでに大きく上昇した後の高値圏で出現した場合は、むしろ天井の可能性を疑うべきです。黒三兵についても同様に、天井圏での出現は信頼性が高く、すでに大きく下落した底値圏での出現は反発の前兆かもしれません。
三空踏み上げ・三空叩き込みの逆張りシグナル
三空のパターンは、酒田五法の中でも特に「逆張り」のシグナルとして使われることが多いパターンです。
三空踏み上げ(上方向に3回窓開け)が完成した場合、相場は過熱状態にあり、反落のリスクが高まっています。ただし、「3回窓が開いたから即座に売り」というのは危険です。相場の勢いが非常に強い場合、4回、5回と窓が開き続けることもあるからです。
実践的なアプローチとしては、三空踏み上げの後に「陰線」や「十字線(寄引同事線)」が出現するのを待ってから売りを検討することをおすすめします。これにより、上昇の勢いが実際に衰えたことを確認してからエントリーできます。
三空叩き込み(下方向に3回窓開け)の場合も同様です。パニック的な売りが一巡したサインではありますが、すぐに買うのではなく、「陽線」や「下ヒゲの長いローソク足」が出現して反発の兆しを確認してからエントリーする方が安全です。
酒田五法とダマシを見抜くコツ
どんなに優れたパターンでも、100%機能するわけではありません。酒田五法にも「ダマシ」は存在します。ダマシを完全に避けることはできませんが、確率を下げるためのコツがあります。
第一に、「出来高」を確認することです。FXでは正確な出来高データを得ることは難しいですが、MT4/MT5のティックボリュームやTradingViewの出来高インジケーターを参考にできます。パターンが完成する際に出来高が増加していれば、そのパターンの信頼性は高まります。
第二に、「上位時間軸との整合性」を確認することです。例えば、1時間足で赤三兵が出現しても、日足が明確な下降トレンドの場合は、ダマシになる可能性が高まります。上位時間軸のトレンド方向と一致するパターンを優先的に採用しましょう。
第三に、「サポート・レジスタンスライン」との位置関係を確認することです。三山や三川のパターンが、過去に何度も意識されてきた重要な価格帯で形成された場合、その信頼性は大幅に向上します。
酒田五法を現代FXで活用する際の注意点
酒田五法は優れた分析手法ですが、現代のFX市場で使う際にはいくつかの注意点があります。江戸時代と現代では市場環境が大きく異なるため、そのまま適用するのではなく、現代の相場に合わせた工夫が必要です。
時間軸(タイムフレーム)の選び方
酒田五法は元々、日足チャートを基準に考案されました。そのため、日足以上の時間軸(週足、月足)で使用すると、最も信頼性が高くなります。
ただし、現代のFXトレーダーは様々な時間軸で取引を行います。4時間足や1時間足でも酒田五法のパターンは出現しますが、時間軸が短くなるほど「ノイズ」が増え、ダマシに遭いやすくなることを理解しておきましょう。
初心者の方には、まず日足チャートで酒田五法のパターンを探す練習をすることをおすすめします。日足でパターン認識の精度を高めてから、徐々に短い時間軸に応用していくのが上達への近道です。
また、スキャルピングのような超短期売買では、酒田五法の効果は限定的です。5分足や1分足でパターンが出現しても、それだけでエントリーの根拠にするのは危険です。短期売買の場合は、他のテクニカル指標と組み合わせて使用することを強くおすすめします。
他のテクニカル指標との組み合わせ
酒田五法を単独で使うよりも、他のテクニカル指標と組み合わせることで精度が向上します。特に相性が良い組み合わせをいくつか紹介します。
まず、「移動平均線」との組み合わせです。例えば、価格が20日移動平均線の上にあり、かつ赤三兵が出現した場合は、上昇トレンドの継続可能性が高いと判断できます。移動平均線がトレンドの方向性を示し、酒田五法がエントリータイミングを示すという役割分担ができます。
次に、「RSI(相対力指数)」との組み合わせです。三空踏み上げの後にRSIが70以上の買われすぎ圏にある場合、反落の可能性がより高まります。逆に、三空叩き込みの後にRSIが30以下の売られすぎ圏にある場合は、反発の可能性が高まります。
また、「水平線(サポート・レジスタンス)」との組み合わせも効果的です。三山のパターンが過去の重要なレジスタンスラインと重なる位置で形成された場合、そのパターンの信頼性は大幅に向上します。複数の根拠が重なるポイントを狙うことで、勝率を高めることができるのです。
| 酒田五法パターン | 相性の良い指標 | 確認ポイント |
|---|---|---|
| 三山・三川 | 水平線、フィボナッチ | 重要な価格帯との重なり |
| 三空 | RSI、ストキャスティクス | 買われすぎ・売られすぎ水準 |
| 三兵 | 移動平均線、MACD | トレンド方向との一致 |
| 三法 | ボリンジャーバンド | バンド幅の収縮・拡大 |
まとめ
この記事では、江戸時代から伝わるローソク足分析の原点「酒田五法」について解説しました。最後に、重要なポイントを振り返っておきましょう。
- 酒田五法は「三山」「三川」「三空」「三兵」「三法」の5つの基本パターンで構成されている
- 三山・三川はトレンド転換のサイン、三兵はトレンド継続のサインとして機能する
- 三空は相場の過熱感を示し、逆張りのシグナルとして使われることが多い
- 三法は「休むも相場」を体現し、調整後のトレンド再開を示す
- 日足以上の時間軸で使用すると信頼性が高く、短い時間軸ではダマシが増える
- 移動平均線やRSI、水平線など他の指標と組み合わせることで精度が向上する
酒田五法は約300年の時を経て今なお使われ続けている手法です。それは、相場を動かす人間心理が時代を超えて普遍的であることの証明でもあります。まずはデモトレードや過去チャートで、5つのパターンを見つける練習から始めてみてください。パターン認識の精度が上がれば、あなたのトレードは確実にレベルアップするはずです。
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