三尊(ヘッドアンドショルダー)とは?FX初心者でもわかる見つけ方とエントリー手法
「チャートパターンを勉強しているけど、三尊ってどこを見て判断すればいいの?」「ヘッドアンドショルダーって聞いたことはあるけど、実際のトレードでどう使うかわからない」——そんな悩みを抱えていませんか?
三尊(ヘッドアンドショルダー)は、FXのテクニカル分析において「最も信頼性が高い反転パターン」として、世界中のトレーダーに認識されています。このパターンを正しく理解すれば、上昇トレンドの終わりを事前に察知し、下落の初動でエントリーすることが可能になります。
この記事では、三尊の基本的な形から、実際のチャートでの見つけ方、エントリーポイント、損切り・利確の設定方法まで、FX初心者の方にもわかりやすく解説します。記事を読み終える頃には、三尊を使ったトレード戦略を自信を持って実践できるようになるでしょう。
三尊(ヘッドアンドショルダー)とは?基本構造を理解しよう
三尊とは、上昇トレンドの天井圏で出現する反転パターンのことです。英語では「ヘッドアンドショルダー(Head and Shoulders)」と呼ばれ、その名の通り「頭と両肩」のような形をしています。
三尊を構成する4つの要素
三尊パターンは、以下の4つの要素で構成されています。それぞれの役割を理解することが、正確なパターン認識の第一歩です。
- 左肩(Left Shoulder)
- 上昇トレンドの中で形成される最初の高値。一度上昇した後、調整の下落が入ります。この時点ではまだ通常の押し目に見えるため、多くのトレーダーは「買い増しのチャンス」と考えます。
- 頭(Head)
- 左肩の高値を更新して作られる、パターン内で最も高い価格帯。「最高値を更新したのだから、まだ上昇トレンドは継続している」と市場参加者が考える場面です。しかし、この後の下落が重要なサインとなります。
- 右肩(Right Shoulder)
- 頭からの下落後、再度上昇するものの、頭の高値を超えられずに形成される高値。ここで「高値を切り下げた」という事実が、上昇の勢いが弱まっていることを示します。
- ネックライン(Neckline)
- 左肩と頭の間の安値、および頭と右肩の間の安値を結んだライン。このラインを下抜けることで、三尊パターンが「完成」したと判断されます。
なぜ三尊は「強力な反転サイン」なのか?
三尊が信頼性の高い反転パターンとされる理由は、その形成過程に「買い手の力が徐々に弱まっていく様子」が明確に表れているからです。
上昇トレンド中、価格は「高値更新 → 押し目 → 再び高値更新」を繰り返します。これがダウ理論でいう「上昇トレンドの定義」です。しかし三尊では、頭で最高値をつけた後、右肩で高値を更新できません。これは「買い手がもう高値を買い上げる力を失った」ことを意味します。
さらに、ネックラインを下抜けると「安値も切り下げた」ことになり、ダウ理論の上昇トレンドの定義が完全に崩れます。だからこそ、三尊のネックライン割れは「トレンド転換の強いシグナル」として機能するのです。
三尊が形成される市場心理
三尊の背景には、以下のような市場参加者の心理変化があります。
- 左肩形成時:上昇トレンドが継続中。押し目では「まだまだ上がる」と買いが入る
- 頭形成時:最高値更新で「やっぱり強い相場だ」と確信。しかし、この高値で利益確定売りも増加
- 右肩形成時:再上昇するも高値を超えられず「あれ、おかしいぞ」と疑念が広がる
- ネックライン割れ:「やっぱりトレンド終了だ」と見切り売りが殺到。下落が加速する
このように、三尊は単なる「形」ではなく、市場参加者の心理が転換していくプロセスそのものを表しているのです。
実際のチャートで三尊を見つける3つのポイント
教科書通りの「きれいな三尊」は、実際の相場ではなかなか出現しません。初心者の方が「これは三尊なのか?」と迷ったときに確認すべき3つのポイントを解説します。
ポイント1:事前に明確な上昇トレンドがあるか
三尊は「上昇トレンドの反転パターン」です。そのため、パターンが形成される前に、ある程度の期間の上昇トレンドが存在していることが前提条件となります。
レンジ相場の中で似たような形が出現しても、それは三尊とは呼びません。「十分に上昇した後の天井圏で出現しているか」をまず確認してください。
具体的には、左肩が形成される前に、少なくとも数回の「高値更新・安値切り上げ」のサイクルがあることが望ましいです。上昇幅が小さい状態で三尊らしき形が出ても、それは単なるレンジの一部である可能性が高くなります。
ポイント2:左右の肩の高さと時間的バランス
理想的な三尊では、左肩と右肩の高さがほぼ同じになります。ただし、実際の相場では完全に一致することは稀です。
重要なのは「右肩が頭の高値を明確に下回っているか」という点です。右肩が頭とほぼ同じ高さまで上昇した場合、それは三尊ではなく「ダブルトップ」や「単なる高値圏でのもみ合い」の可能性があります。
また、時間的なバランスも重要です。左肩から頭までの期間と、頭から右肩までの期間が極端に異なる場合、パターンの信頼性は低下します。目安として、両者の期間が2倍以上違う場合は注意が必要です。
ポイント3:ネックラインの傾きと明確さ
ネックラインは必ずしも水平である必要はありません。やや右上がり(上昇ネックライン)や右下がり(下降ネックライン)になることもあります。
一般的に、ネックラインが右下がりの三尊は「より弱気なパターン」とされます。なぜなら、谷の部分(左肩と頭の間、頭と右肩の間の安値)が切り下がっていることは、下落圧力がより強いことを示唆するからです。
逆に、ネックラインが急角度で右上がりの場合は、三尊というより「上昇トレンド中の調整」である可能性が高く、パターンの信頼性は低下します。
| ネックラインの傾き | 意味 | 信頼性 |
|---|---|---|
| 水平 | 標準的な三尊パターン | 高い |
| やや右下がり | 下落圧力が強い弱気パターン | 非常に高い |
| やや右上がり | まだ買い支えがある状態 | 中程度 |
| 急角度で右上がり | 上昇トレンド継続の可能性 | 低い |
三尊を使ったエントリー戦略と損切り・利確の設定
三尊パターンを認識できても、「いつエントリーするか」「どこに損切りを置くか」が曖昧では利益に結びつきません。ここでは、実践的なエントリー戦略を3つ紹介します。
エントリー方法1:ネックラインブレイクでエントリー
最もオーソドックスな方法が、ネックラインを下抜けた瞬間にショート(売り)エントリーする戦略です。
この方法のメリットは、「三尊完成」という明確なシグナルを確認してからエントリーできる点です。ただし、ブレイク直後は「ダマシ」の可能性もあるため、ローソク足の終値がネックラインを明確に下回ったことを確認してからエントリーすることをおすすめします。
具体的には、1時間足でトレードしているなら、1時間足の終値がネックラインを下回った次の足の始値でエントリーします。これにより、「ヒゲだけの下抜け」に惑わされるリスクを軽減できます。
エントリー方法2:リテスト(戻り)を待ってエントリー
ネックラインを下抜けた後、価格が一度ネックラインまで戻ってくる動き(リテスト)を待ってからエントリーする方法です。
この方法のメリットは、より有利な価格でエントリーできることと、ネックラインが「レジスタンス(抵抗線)」に転換したことを確認できる点です。ブレイク前はサポート(支持線)として機能していたネックラインが、ブレイク後はレジスタンスに変わる——これを「ロールリバーサル」と呼びます。
デメリットは、必ずしもリテストが発生するとは限らない点です。強い下落の場合、戻りを待っている間に価格はどんどん下がっていき、エントリーチャンスを逃すこともあります。
エントリー方法3:右肩形成中にエントリー(上級者向け)
三尊が「完成する前」、つまり右肩が形成されている段階でショートエントリーする方法です。
この方法は、ネックラインブレイクを待つよりも有利な価格でエントリーでき、リスクリワードレシオを大きく改善できます。しかし、三尊が完成せずに高値を更新してしまうリスクがあるため、上級者向けの戦略です。
実行する場合は、右肩のエリアで下位足(例:15分足や5分足)の反転パターンや、RSIのダイバージェンスなど、追加の根拠を組み合わせることが重要です。
損切りの設定方法
三尊トレードにおける損切りの基本は、「パターンが否定される位置」に置くことです。
- ネックラインブレイクでエントリーした場合:右肩の高値の少し上に損切りを設定。これを超えると三尊が否定される可能性が高い
- リテストでエントリーした場合:同様に右肩の高値の上、または直近のスイングハイの上に設定
- 右肩形成中にエントリーした場合:頭の高値の少し上に設定。ここを超えると完全にパターンが崩れる
損切り幅が広くなりすぎる場合は、ロット数を調整して、1回のトレードで失う金額が総資金の2%以内に収まるようにしてください。
利確目標の計算方法
三尊の利確目標は、伝統的に「頭からネックラインまでの値幅」を、ネックラインブレイクポイントから下に投影した位置とされています。
例えば、頭が150.00円、ネックラインが148.00円の場合、値幅は2円です。ネックラインを下抜けた後の利確目標は、148.00円から2円下の146.00円となります。
ただし、これはあくまで「目安」です。途中に強いサポートラインがある場合は、そこで利確を検討するのが現実的です。また、下落が勢いづいた場合は、目標値を超えて大きく下落することもあります。分割決済を活用して、利益を確保しながらトレンドを追いかけるのも有効な戦略です。
逆三尊(逆ヘッドアンドショルダー)との違いと活用法
三尊が「上昇トレンドの反転(下落への転換)」を示すパターンであるのに対し、逆三尊(インバース・ヘッドアンドショルダー)は「下降トレンドの反転(上昇への転換)」を示すパターンです。
逆三尊の基本構造
逆三尊は、三尊をそのまま上下反転させた形です。
- 左肩(逆)
- 下降トレンドの中で形成される最初の安値。一度下落した後、反発の上昇が入ります
- 頭(逆)
- 左肩の安値を更新して作られる、パターン内で最も低い価格帯
- 右肩(逆)
- 頭からの上昇後、再度下落するものの、頭の安値を更新できずに形成される安値。ここで「安値を切り上げた」ことが、下落の勢いが弱まっていることを示します
- ネックライン(逆)
- 左肩と頭の間の高値、および頭と右肩の間の高値を結んだライン。このラインを上抜けることで、逆三尊パターンが完成
逆三尊のエントリー戦略
逆三尊の場合、エントリーは「ロング(買い)」になります。基本的な考え方は三尊の逆で、ネックラインを上抜けたらロングエントリー、損切りは右肩の安値の下、利確目標は頭からネックラインまでの値幅を上に投影した位置です。
逆三尊は「底値圏での反転パターン」であり、成功すれば大きなトレンドの初動を捉えることができます。ただし、下降トレンド中に「逆三尊かも」と期待して早まったエントリーをすると、さらなる下落に巻き込まれるリスクがあります。必ずネックラインブレイクを確認してからエントリーすることを心がけてください。
三尊と逆三尊の比較表
| 項目 | 三尊 | 逆三尊 |
|---|---|---|
| 出現場所 | 上昇トレンドの天井圏 | 下降トレンドの底値圏 |
| 示すシグナル | 下落への反転 | 上昇への反転 |
| エントリー方向 | ショート(売り) | ロング(買い) |
| ネックラインの役割 | サポート→レジスタンス | レジスタンス→サポート |
初心者が陥りやすい三尊トレードの失敗パターン
三尊は信頼性の高いパターンですが、使い方を誤ると大きな損失につながることもあります。ここでは、初心者が特に注意すべき失敗パターンを紹介します。
失敗パターン1:どこにでも三尊を見つけようとする
チャートを見続けていると、「これも三尊、あれも三尊」と、あらゆるところにパターンを見出してしまうことがあります。これを「パターン認識の過剰適合」と呼びます。
三尊として有効なのは、明確な上昇トレンドの後に出現し、かつ左肩・頭・右肩・ネックラインの4要素がはっきりと確認できる場合のみです。「なんとなく三尊っぽい」という曖昧な根拠でのエントリーは避けてください。
失敗パターン2:ネックラインブレイク前にエントリーしてしまう
「右肩ができたからもう下がるはず」と思い込み、ネックラインを割る前にショートエントリーしてしまうケースです。
三尊は「ネックラインを割って初めて完成する」パターンです。ネックラインを割る前に反発して高値を更新し、上昇トレンドが継続することも珍しくありません。上級者向けの「右肩エントリー」は、明確な追加根拠がある場合にのみ検討してください。
失敗パターン3:小さい時間足だけで判断する
5分足や15分足だけを見て「三尊だ」と判断し、エントリーしてしまうケースです。小さい時間足で出現するパターンは、上位足の大きなトレンドの中では単なる「ノイズ」に過ぎないことがあります。
三尊トレードを行う際は、必ず上位足(日足や4時間足)のトレンド方向を確認してください。上位足が明確な上昇トレンド中であれば、下位足の三尊は「押し目」として機能し、すぐに反発上昇する可能性が高くなります。
失敗パターン4:利確目標に固執しすぎる
「教科書では頭からネックラインの値幅が利確目標」と覚え、途中に強いサポートがあっても無視して保有し続けてしまうケースです。
利確目標はあくまで「目安」です。途中に過去の重要なサポートライン、ラウンドナンバー(100円、150円などのキリのいい数字)、フィボナッチリトレースメントの重要な水準などがある場合は、そこで一部または全部を利確することを検討してください。
失敗パターン5:出来高(ボリューム)を無視する
株式市場では、三尊パターンの信頼性を「出来高」で確認することが一般的です。FXでは正確な出来高データは得られませんが、ティックボリュームやボラティリティを参考にすることは可能です。
理想的な三尊では、左肩から頭への上昇時よりも、頭から右肩への上昇時の方が勢いが弱く(ボラティリティが低下)、ネックラインブレイク時に勢いが増す(ボラティリティが上昇)傾向があります。この「勢いの変化」も判断材料の一つとして意識してみてください。
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この記事では、FXにおける強力な反転パターン「三尊(ヘッドアンドショルダー)」について、基本構造から実践的なエントリー戦略まで解説しました。
三尊トレードで成功するためのポイントを整理します。
- 三尊は「左肩・頭・右肩・ネックライン」の4要素で構成される上昇トレンドの反転パターン
- パターンの信頼性を高めるには、事前に明確な上昇トレンドがあること、左右の肩のバランスが取れていること、ネックラインが明確に引けることを確認する
- 基本的なエントリーは「ネックラインブレイク」または「リテスト」を待ってから行う
- 損切りは右肩の高値の上に設定し、パターンが否定されたら素直に撤退する
- 利確目標は頭からネックラインの値幅が目安だが、途中のサポートも考慮して柔軟に判断する
- 逆三尊は底値圏で出現する反転パターンで、エントリーはロング(買い)方向
三尊パターンは、形を覚えるだけでなく「なぜこの形が反転を示すのか」という市場心理を理解することで、より精度の高いトレードが可能になります。まずはデモトレードや過去チャートの検証で、三尊を見つける練習から始めてみてください。
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