【FX 基礎知識】ロング(買い)とショート(売り)の違いと空売りの仕組み
FXを始めると、必ずと言っていいほど「ロング」「ショート」という言葉にぶつかります。「単に『買い』『売り』と言えばいいのに、なぜわざわざ横文字を使うの?」と疑問に思ったことはありませんか?
実は、この言葉の裏にはFXならではの「ある特殊な仕組み」が隠されています。特に「ショート(空売り)」の仕組みを正しく理解することは、下落相場でも利益を出すための最大の武器になります。
この記事では、単なる言葉の意味だけでなく「なぜ持っていない通貨を売ることができるのか?」という仕組みや、「買いと売りのリスクの違い」まで、中級者へのステップアップに必要な知識をわかりやすく解説します。仕組みがわかれば、トレードの視野がグッと広がりますよ。
ロング(買い)とショート(売り)の基本定義
まずは基本用語の整理です。FXの世界では、通貨を買って保有することを「ロング」、通貨を売って保有することを「ショート」と呼びます。これは単なるかっこつけではなく、金融業界全体の共通言語です。
ロング(Long Position)=「買い」
「これから相場が上がる」と予想した時に行う取引です。安い時に買って、高くなったら売ることで利益(為替差益)を狙います。
- イメージ:強気(Bull)。価格上昇を期待して、ポジションを「長く(Long)」持ち続ける傾向があることから由来したという説があります。
- 利益の出し方:1ドル=100円で買い(ロング) → 105円になったら決済売り = 5円の利益。
ショート(Short Position)=「売り」
「これから相場が下がる」と予想した時に行う取引です。高い時に売って、安くなったら買い戻すことで利益を狙います。
- イメージ:弱気(Bear)。売り手は手元に資金や現物が「不足(Short)」している状態で行うことや、下落局面は短期間で終わることが多いことから由来したと言われています。
- 利益の出し方:1ドル=100円で売り(ショート) → 95円になったら決済買い = 5円の利益。
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なぜ持っていない通貨を売れる?「空売り」の仕組み
初心者が最もつまずきやすいのが、「手元にドルを持っていないのに、なぜ先に売ることができるのか?」という点です。これを「空売り(からうり)」と呼びます。
この仕組みを理解するには、FX会社との間で行われている「貸し借り」をイメージするとわかりやすくなります。
仕組みは「借りて売って、買い戻して返す」
あなたが「ドル売り(ショート)」の注文を出したとき、裏側では次のような処理が行われています。
- 借りる:あなたはFX会社から、証拠金(担保)を預ける代わりに「ドル」を借ります。
- 売る:借りたドルを、すぐに現在の市場価格(例:1ドル=150円)で売って、日本円にします。
- 待つ:相場が下がる(円高になる)のを待ちます。
- 買い戻す:相場が1ドル=140円に下がったところで、ドルを買い戻します。
- 返す:買い戻したドルをFX会社に返却します。
この時、最初に150円で売って手にした現金と、あとで140円で買い戻した時の差額(10円)が、あなたの手元に利益として残ります。
実際の取引画面では、この複雑なプロセスを一瞬のクリック一つで行えますが、「先に売る権利を借りている」という感覚を持つと、FXの仕組みがより深く理解できるでしょう。
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【重要】ロングとショートの決定的なリスクの違い
ここからが中級者へのステップアップです。ロングとショートは「上がるか下がるか」だけの違いに見えますが、実はリスクの質が全く異なります。
ドル円などショート(売り)を行う際、ロング以上に慎重になります。その理由は主に2つあります。
1. スワップポイント(金利)の支払いが続く
FXには通貨ペアの金利差である「スワップポイント」があります。一般的に、日本円のような低金利通貨を売って、米ドルのような高金利通貨を買う(ロング)と、スワップポイントを「受け取る」ことができます。
逆に、高金利通貨をショート(売り)する場合、あなたはスワップポイントを毎日「支払う」ことになります。つまり、ショートポジションは持っているだけでコストがかかり続ける可能性があるのです。
「下がると予想してショートしたのに、なかなか下がらず、毎日金利だけ取られていく」というのは、ショートにおける典型的な失敗パターンです。
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2. 損失額が「青天井」になるリスク(理論上の話)
これは非常に重要な概念です。
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ロング(買い)の損失は限定的:
通貨の価格が0円未満になることはありません。1ドル=100円で買った場合、最悪でも価値が0円になるまでの「100円幅」の損失で済みます(実際には強制ロスカットがありますが)。 -
ショート(売り)の損失は無限大:
通貨の価格に上限はありません。1ドル=100円で売った(ショートした)後、相場が暴騰して200円、300円、1000円…と上がり続けた場合、損失額に天井がないのです。
もちろん、現実の為替相場で通貨が無限に上がることは考えにくいですが、「売りは買いよりもリスク管理を厳格にすべき」という教訓として、「買いは家まで、売りは命まで」という相場格言があるほどです。
実践:下落相場を利益に変える手順
リスクを理解した上で、ショート(空売り)を使いこなせれば、相場が暴落している時でも利益を上げられるようになります。これは株取引(現物)にはないFXの大きなメリットです。
具体的な手順は以下の通りです。
- トレンドの判断:チャートを見て、右肩下がりの「下降トレンド」であることを確認する。
- エントリー(新規注文):注文画面で「売(Bid)」または「ショート」を選択して注文を出す。
- 決済注文の予約(重要):
- 利益確定(指値):今の価格より「低い」価格を指定。
- 損切り(逆指値):今の価格より「高い」価格を指定。
- 決済:目標価格に達したら自動で買い戻し決済が行われ、利益が確定する。
初心者のうちは、長期的に金利がもらえる「ロング」を中心に行い、短期的な下落局面のみ「ショート」を狙う、という使い分けがおすすめです。
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- Q. 「決済売り」と「新規売り(ショート)」の違いは何ですか?
- A. まったく別の行為です。「決済売り」は、既に持っている買いポジションを手放して取引を終了することです。「新規売り(ショート)」は、新しくポジションを持って取引を開始することです。ボタンを押し間違えないように注意しましょう。
- Q. 強制ロスカットされやすいのはどっちですか?
- A. 仕組み上は同じですが、心理的にはショートの方が焦りやすい傾向にあります。相場が急騰する(価格が上がる)スピードは、下落するスピードよりもゆっくりなことが多いですが、ショートの場合はスワップポイントの支払い負担が重なると、証拠金維持率がじわじわ削られるため注意が必要です。
まとめ
ロングとショートの違いを理解することで、FXは「上がる時だけ」でなく「下がる時」も収益チャンスに変えることができます。
重要ポイントの復習:
- ロング(買い):上がれば利益。スワップを受け取れることが多い。損失は限定的。
- ショート(売り):下がれば利益。仕組みは「借りて売る」。スワップを支払うことが多い。
- リスク管理:ショートは理論上損失が青天井になるため、必ず損切り設定を入れること。
- 使い分け:上昇局面はロング、下落局面はショートと柔軟に切り替えるのがFXの醍醐味。
まずはデモトレードなどで、「売りから入る」感覚を体験してみてください。下落トレンドで利益が増えていく様子を見ると、相場の見方がガラッと変わりますよ。
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【免責事項】
本記事は情報提供を目的としており、投資の勧誘を目的とするものではありません。FX(外国為替証拠金取引)は元本保証のない金融商品であり、相場変動等により元本を上回る損失が生じるリスクがあります。お取引に際しては、契約締結前交付書面等をよくお読みいただき、仕組みやリスクを十分にご理解の上、ご自身の判断と責任において行ってください。