【FX 基礎知識】スワップポイントとは?金利差で稼ぐ仕組みと注意点
「FXで不労所得が得られる」という話を聞いたことはありませんか?
その正体が、今回解説する「スワップポイント」です。毎日チャリンチャリンと口座にお金が入ってくる仕組みは、確かに魅力的です。銀行預金の金利がほぼゼロの日本において、外貨を持つだけで高い金利が得られるのはFXの大きなメリットの一つと言えます。
しかし、仕組みを正しく理解せずに「高金利だから」という理由だけで飛びつくと、痛い目を見ることになります。スワップポイントで得た利益以上に、為替の変動で損をしてしまうケースが後を絶たないからです。
この記事では、スワップポイントが発生する「裏側の仕組み(ロジック)」から、メリットだけでなく、必ず知っておくべきリスクや注意点まで、専門的な視点を交えて丁寧に解説します。
「なぜ水曜日に3日分のスワップがつくのか?」「なぜ売りポジションだと支払うことになるのか?」といった疑問も、この記事を読めばスッキリ解決します。仕組みを理解して、賢く資産を増やしていきましょう。
スワップポイントの正体|金利差調整額の仕組み
スワップポイントとは、一言で言えば「2つの通貨の金利差調整分」のことです。
FX(外国為替証拠金取引)は、ある通貨を売って別の通貨を買う取引です。それぞれの通貨には、その国の中央銀行が決めた「政策金利」などの金利が存在します。
この「金利が違う通貨」を交換して保有し続ける場合、その金利差を埋め合わせる必要が出てきます。これがスワップポイントの正体です。
「受け取り」と「支払い」のルール
基本のルールは非常にシンプルです。
- 低金利通貨を売って、高金利通貨を買う
→ 金利差を受け取れる(プラスのスワップ) - 高金利通貨を売って、低金利通貨を買う
→ 金利差を支払う(マイナスのスワップ)
例えば、日本の金利が0.1%、アメリカの金利が5.0%だと仮定しましょう。
あなたが米ドル/円(USD/JPY)を「買い(ロング)」で保有する場合、「低金利の円を売って、高金利のドルを買っている」状態になります。そのため、その金利差(約4.9%分)を日割り計算した金額を毎日受け取ることができます。
FX会社によって金額が違う理由
「金利差なら、どこのFX会社でも同じ金額じゃないの?」と思うかもしれません。しかし、実際にはFX会社によってスワップポイントの金額は異なります。
これは、各FX会社がカバー先の銀行とやり取りする際の手数料や、会社ごとの戦略(スワップポイントを高くして顧客を集めたい、など)が反映されているためです。スワップポイント狙いの投資をする場合は、「スワップポイントが高いFX会社を選ぶこと」が非常に重要になります。
なぜ毎日発生する?ロールオーバーと「3倍デー」の謎
ここからは、少し専門的な「仕組み(ロジック)」の話をします。なぜスワップポイントは「毎日」発生するのでしょうか?
「ロールオーバー」という仕組み
FXは本来、「2営業日後」に通貨を交換(受渡し)する約束の取引です(これをスポット取引といいます)。
しかし、多くの個人投資家は実際に外貨を受け取りたいわけではなく、差金決済で利益を出したいと考えています。そこで、決済せずに日をまたぐ場合、FX会社は自動的に「決済日を1日先送りする」という処理を行います。これを「ロールオーバー」と呼びます。
受渡し日を1日延ばすということは、その1日分だけ「お金を貸し借りしている期間」が延びることを意味します。そのため、日をまたぐたびに1日分の金利差(スワップポイント)が発生し、精算されるのです。
水曜日はスワップポイントが3倍になる理由
FXをやっていると「水曜日はスワップ3倍デー」という言葉を耳にします。これは単なるキャンペーンではなく、市場の仕組み上のルールです。
先ほど「受渡しは2営業日後」と説明しました。
- 水曜日の取引の受渡し日(2営業日後)は、金曜日です。
- 木曜日にロールオーバーすると、受渡し日は金曜日から月曜日(3日後)に延びます。
この時、土曜日と日曜日は銀行が休みで取引できませんが、お金を借りていることに変わりはないため、金利は発生します。
そのため、水曜日から木曜日にかけてポジションを持ち越すと、「土・日・月」の3日分の金利差がまとめて付与されるのです。
注意:祝日などの関係で「3倍デー」が木曜日にずれたり、4日分になったりすることもあります。FX会社の「スワップカレンダー」で確認しましょう。
高金利の罠?スワップ狙いで失敗する3つのリスク
「寝ていてもお金が増える」という甘い言葉には、必ず裏があります。スワップポイント狙いの投資には、明確なリスクが存在します。
1. 為替差損で利益が吹き飛ぶ
これが最も多い失敗パターンです。
いくら毎日スワップポイントをもらっても、それ以上に通貨自体の価値が下がってしまえば、トータルでは損をします。
経済学の理論上、金利が高い国の通貨は、長期的にはインフレ率が高くなりやすく、通貨安(価値が下がる)になりやすい傾向があります(購買力平価説)。
例えば、高金利で人気の「トルコリラ」は、長年にわたり対円で暴落を続けています。「スワップで稼ぐつもりが、元本が半分になってしまった」という事態は十分にあり得ます。
2. マイナススワップの支払い
買いポジション(ロング)ではプラスのスワップでも、売りポジション(ショート)を持つと、逆にスワップポイントを支払うことになります。
しかも、多くのFX会社では「受け取り額」よりも「支払い額」の方を大きく設定しています。両建て(買いと売りを同時に持つこと)をすると、スワップポイントの差額分だけ毎日損をしていくことになるので注意が必要です。
3. 強制ロスカットのリスク
スワップポイント狙いは長期保有が前提ですが、その間にリーマンショック級の暴落が起きる可能性はゼロではありません。
レバレッジを高くしすぎていると、一時的な暴落に耐えきれず強制ロスカットされ、資産を失ってしまいます。
実践!スワップポイントの計算方法と受け取り方
では、実際にどれくらいのスワップポイントがもらえるのか、具体的な手順を確認しましょう。
スワップポイントの確認方法
各FX会社の公式サイトや取引ツールには、「スワップポイントカレンダー」や「一覧表」があります。まずはここをチェックします。
例えば、「米ドル/円の買いスワップ:200円」と書かれていた場合、これは通常「1万通貨(1ロット)あたり、1日につき200円」という意味です。
利益のシミュレーション例
条件:米ドル/円(1ドル=150円)、スワップポイント1日200円(1万通貨あたり)
- 1万通貨保有の場合:
毎日200円 × 30日 = 月6,000円
年間で 72,000円 の利益 - 10万通貨保有の場合:
毎日2,000円 × 30日 = 月60,000円
年間で 720,000円 の利益
一見すごい金額に見えますが、10万通貨を持つには(レバレッジ1倍で)約1,500万円の資金が必要です。レバレッジをかければ少ない資金で持てますが、前述のロスカットリスクが高まります。
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Q1. スワップポイントだけで生活できますか?
A. 理論上は可能ですが、莫大な資金が必要です。
月20万円のスワップ生活をするには、年利5%換算でも約4,800万円の元手が必要です。レバレッジをかければ必要資金は減りますが、少しの円高で破産するリスクを背負うことになります。「お小遣い程度になればラッキー」くらいの感覚が安全です。
Q2. スワップポイントに税金はかかりますか?
A. かかりますが、課税のタイミングに注意が必要です。
基本的にFXの利益は「雑所得」として課税対象です。
重要なのは、「ポジションを決済していなくても、スワップポイントだけ毎年課税される」FX会社と、「決済するまでは課税されない」FX会社があることです。複利効果を狙うなら、決済まで課税されない会社(未実現スワップ非課税)を選ぶのが有利です。
Q3. マイナススワップはいつ引かれますか?
A. ニューヨーククローズ(日本時間の早朝)のタイミングです。
日本時間の朝6:55(夏時間は5:55)頃にロールオーバー処理が行われ、その瞬間にポジションを持っているとスワップポイントの受け渡しが確定します。マイナススワップを避けるには、この時間になる前に決済する必要があります。
まとめ
スワップポイントはFXの大きな魅力ですが、あくまで「おまけ」あるいは「長期投資のクッション」として考えるのが賢明です。金利差だけで稼ごうとすると、どうしてもリスクを取りすぎてしまいます。
この記事の重要ポイント:
- スワップポイントは「2国間の金利差調整額」である。
- 毎日もらえるのは、決済日を先送り(ロールオーバー)しているから。
- 水曜日は土日分を含めて3倍のスワップが付与される。
- 高金利通貨はインフレによる通貨安(為替差損)のリスクが高い。
- スワップ狙いでも、レバレッジ管理とロスカット対策は必須。
- FX会社によって付与額や課税タイミングが異なるため、会社選びが重要。
まずは少額から、レバレッジを低く抑えて(1〜3倍程度)、為替変動に耐えられる設定でスワップポイント投資を試してみてください。仕組みを理解した上での長期保有は、着実な資産形成の助けになるはずです。
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【免責事項】
本記事は情報提供を目的としており、投資の勧誘を目的とするものではありません。FX(外国為替証拠金取引)は元本保証のない金融商品であり、相場変動等により元本を上回る損失が生じるリスクがあります。お取引に際しては、契約締結前交付書面等をよくお読みいただき、仕組みやリスクを十分にご理解の上、ご自身の判断と責任において行ってください。