【FX 基礎知識】pips(ピップス)とは?利益計算に必要な単位の数え方

FXを始めると必ず耳にする「pips(ピップス)」という言葉。「10pips抜いた」「20pipsの損切り」といった会話を聞いて、「なぜ『円』や『ドル』で言わないの?」と疑問に思ったことはないでしょうか。

実は、このpipsという単位こそが、FXにおける「共通言語」であり、リスク管理の要(かなめ)なのです。単なる利益計算の単位だと思っていると、知らないうちに許容範囲を超えたリスクを背負ってしまうことになります。

この記事では、pipsの計算方法といった基礎的な手順はもちろん「なぜpipsという概念が必要なのか?」という本質的な理由や、pipsを重視するロジックについて中級者向けに深掘りして解説します。

pips(ピップス)とは何か?なぜ「円」ではないのか

まずは基礎知識の再確認と、その背景にある「仕組み」を理解しましょう。結論から言うと、pips(Percentage in Point)とは、異なる通貨ペア同士の変動幅を統一して表すための共通単位です。

pips(ピップス)とは?利益計算に必要な単位の数え方

通貨ごとの「単位の違い」を埋める共通言語

世界中の通貨には、それぞれの単位があります。日本円なら「円」、米ドルなら「ドル」、ユーロなら「ユーロ」です。さらに、レートの桁数も異なります。

  • 米ドル/円(USD/JPY):150.50円(小数点以下2桁〜3桁)
  • ユーロ/米ドル(EUR/USD):1.0850ドル(小数点以下4桁〜5桁)

このように桁数がバラバラな状態で、「0.01動いた」と言っても、それが大きな変動なのか微細な変動なのか、通貨ペアによって意味合いが全く変わってしまいます。

そこで、「最小の変動単位(または基準となる変動単位)」を「1pip(ピップ)」と定義することで、どの通貨ペアを取引していても「値幅の大きさ」を直感的に把握できるようにしたのです。これがpipsが存在する最大の理由です。

「1pips」は具体的にいくらなのか?

通貨ペアは大きく分けて「クロス円(円が絡むペア)」と「ドルストレート(円を含まないペア)」の2種類で数え方が異なります。ここを混同すると計算が狂うため、必ず暗記してください。

通貨ペアの種類 1pipsの定義 レート表記の例
クロス円
(USD/JPY, EUR/JPYなど)
0.01円(1銭) 150.51
(小数第2位)
ドルストレート
(EUR/USD, GBP/USDなど)
0.0001通貨 1.0851
(小数第4位)

注意:MT4/MT5などの取引ツールにおける「Point」との違い
最近の取引ツールでは、より細かい価格変動を表示するために、pipsの下にさらに1桁小さい単位を表示することが一般的です。
例えば、ドル円が「150.505」と表示されている場合、一番右の「5」は「0.1pips」に相当します。ツール上ではこれを「ポイント(Point)」と呼ぶことが多く、「10ポイント = 1pips」となるケースがほとんどです。スプレッドなどの表示を見る際は、それがpips表記なのかポイント表記なのかを必ず確認しましょう。

あわせて読みたい:スプレッドとは?実質コストの仕組みと広い・狭いの影響

通貨ペアごとのpipsの数え方と計算式

次に、実際のトレードで損益を計算するためのロジックを解説します。ここを理解していないと、「思ったより利益が少なかった」「予想以上に損失が膨らんだ」という事態に陥ります。

損益計算の基本公式

FXの損益は以下の計算式で求められます。

獲得pips × 取引数量(ロット) = 損益額

ここで重要になるのが「取引数量(ロット)」です。国内FX会社の多くは1ロット=10,000通貨ですが、海外FXなどでは1ロット=100,000通貨が基準であることが多いです。ご自身の利用している口座の1ロットの定義を確認してください。

ケーススタディ:1ロット(1万通貨)で取引した場合

ここでは、国内等の標準的な「1ロット=1万通貨」を前提に、1pips動いた時の損益を見てみましょう。

1. ドル円(USD/JPY)の場合

  • レートが 150.00 → 150.01 に上昇(+1pips)
  • 0.01円 × 10,000通貨 = 100円の利益

つまり、クロス円において1万通貨取引なら「1pips=100円」と覚えておけば簡単です。

2. ユーロドル(EUR/USD)の場合

  • レートが 1.1000 → 1.1001 に上昇(+1pips)
  • 0.0001ドル × 10,000通貨 = 1ドルの利益

ここで注意が必要です。利益は「1ドル」で確定しますが、口座残高が日本円の場合、この1ドルはその時点のドル円レートで円換算されます。ドル円が150円なら、150円の利益になります。

海外FXやMT4を使う場合の注意点
ユーロドルなどのドルストレート通貨ペアを取引する場合、1pipsあたりの価値は「その時点のドル円レート」に左右されます。円安(ドル高)が進んでいるときは、同じ1pipsでも日本円換算での利益(および損失)額が大きくなることを覚えておきましょう。

あわせて読みたい:ロング(買い)とショート(売り)の違いと空売りの仕組み

【実践】pipsを使った正しいリスク管理の手順

ここからが本記事の核となる部分です。多くの初心者は「なんとなく1ロットで」と取引量を固定してトレードしがちですが、これはリスク管理の観点から完全に間違いです。

正しい手順は、「許容損失額から逆算して、ロット数を決める」ことです。この計算にpipsが不可欠なのです。

なぜロット固定が危険なのか?

例えば、同じ「1ロット」でエントリーするとしても、損切りまでの距離(pips)は相場状況によって変わります。

  • ケースA: レンジ相場で、損切りまで10pipsの浅い位置に設定
  • ケースB: ボラティリティ(変動率)が高く、損切りまで50pips離す必要がある場面

もし1ロット(1pips=100円)で固定していた場合:

  • ケースAの損失:10pips × 100円 = 1,000円
  • ケースBの損失:50pips × 100円 = 5,000円

このように、エントリーする場面によって「失う金額」が5倍も変わってしまいます。これでは資金管理ができているとは言えません。これを防ぐために、以下のステップで考えます。

ステップ1:チャート上で損切りラインを決める

まず資金のことは一旦忘れて、チャート分析(テクニカル分析)に基づいて「ここを割ったら根拠が崩れる」という損切りラインを決めます。そして、エントリー価格から損切りラインまでの距離(pips)を測ります。

例:損切り幅は20pipsとする。

ステップ2:許容損失額を決める

自分の総資金に対して、1回のトレードで失っていい金額を決めます(一般的には総資金の2%以下が推奨されます)。

例:資金100万円の2% = 20,000円まで負けてもよい。

ステップ3:ロット数を逆算する

ここでpipsを使います。「20pips逆行した時に、損失が20,000円になるロット数」を計算します。

  • 20,000円 ÷ 20pips = 1,000円(1pipsあたりの許容変動額)
  • クロス円の場合、1万通貨で1pips=100円なので、1,000円 ÷ 100円 = 10ロット(10万通貨)

この手順を踏むことで、損切り幅が広い時はロットを小さく、狭い時はロットを大きく張ることができ、どのような相場環境でも1回あたりの損失リスクを一定に保つことができます。

あわせて読みたい:レバレッジとは?リスクと資金効率の正しい考え方

pipsやリスクリワードの計算ツールが標準搭載された高機能チャート TradingView なら、損切り幅をドラッグするだけで自動的にロット数やリスク額を計算してくれるものもあります。ぜひ活用して、正確な資金管理を心がけましょう。

[PR] TradingView チャート pipsやリスクリワードの計算ツールが標準搭載!

なぜプロは金額ではなくpipsで会話するのか

SNSやトレーダー同士の会話で「今月は100万円勝った」ではなく「今月は200pips抜いた」という表現が好まれるのには、明確な理由があります。

1. 資金力の違いを排除して「実力」を測るため

「100万円勝った」と言っても、元手が1億円ある人が100万円勝つのと、元手が10万円の人が100万円勝つのでは、トレードの難易度やリスクの取り方が全く異なります。

一方で「100pips獲得した」というのは資金量に関係なく、相場の値動きをどれだけ的確に捉えられたかという純粋なトレードスキル(技術)の指標になります。ロットを極端に大きくすれば運で金額を稼ぐことはできますが、安定してプラスのpipsを積み上げるには技術が必要です。

2. メンタルコントロールのため

トレード中に「今、含み益が5万円だ、10万円だ」と金額で考えてしまうと、どうしても「10万円あれば旅行に行ける」といった邪念が入り、利確を急いだり損切りを躊躇したりする原因になります。

トレーダーの多くは損益額の表示を隠し、獲得pips数だけを見て淡々とトレードすることで、金額によるメンタルへの負荷を軽減しています。「お金」ではなく「ポイント(スコア)」を稼ぐゲームとして捉えることが、冷静な判断を保つコツです。

よくある質問(FAQ)

Q. スキャルピングの場合、何pipsくらいを狙うのが普通ですか?
A. 通貨ペアやボラティリティによりますが、一般的にスキャルピングでは数pips〜10pips程度を積み重ねるスタイルが多いです。ただし、狙うpipsが小さいほど、スプレッド(取引コスト)の比率が高くなるため、より高い勝率や狭いスプレッドの業者が求められます。
Q. 「100pips」動くのにどれくらいの時間がかかりますか?
A. 相場状況によります。ドル円であれば、平穏な日は1日の変動幅が50〜60pips程度のこともありますが、重要指標の発表や要人発言、有事の際などは数分〜数時間で100pips以上動くことも珍しくありません。平均的なボラティリティ(ATRなど)を確認する習慣をつけましょう。
Q. 「pips」と「銭」はどう使い分ければいいですか?
A. 基本的に同じ意味です。「10銭 = 10pips」です。国内のニュースや銀行の為替レート表示では「銭」が使われることが多いですが、FXのトレード画面やチャート分析ソフト、国際的な情報のやり取りでは「pips」が標準です。FXをやる以上はpips表記に慣れておくことをおすすめします。

まとめ:pipsを制する者は資金管理を制す

pipsは単なる「単位」ではありません。それは、異なる通貨ペアを横断してリスクを管理し、資金量に惑わされずに自身のトレードスキルを客観視するための重要なツールです。

  • pipsは通貨ペアごとの価値を統一する「共通言語」。
  • クロス円は「0.01円=1pip」、ドルストレートは「0.0001ドル=1pip」。
  • 損切り幅(pips)から逆算してロット数を決めるのが正しい資金管理。
  • 金額ではなくpipsで考えることで、メンタルへの負荷を減らせる。

これから脱初心者を目指すのであれば、まずは「いくら儲かったか」よりも「今月は何pips獲得できたか(あるいは何pipsのリスクに対して何pipsのリターンを得たか)」を記録するようにしてみてください。その視点の転換が、安定したトレーダーへの第一歩となるはずです。

[PR]【DMM FX】について詳しくはこちら 初心者にも分かりやすいpips表示と取引ツール! DMM FX

【免責事項】
本記事は情報提供を目的としており、投資の勧誘を目的とするものではありません。FX(外国為替証拠金取引)は元本保証のない金融商品であり、相場変動等により元本を上回る損失が生じるリスクがあります。お取引に際しては、契約締結前交付書面等をよくお読みいただき、仕組みやリスクを十分にご理解の上、ご自身の判断と責任において行ってください。