エリオット波動理論とは?初心者でもわかる上昇5波・下降3波の基本と実践活用法
「チャートを見ていても、どこでトレンドが終わるのかわからない」「なんとなく上がりそう、下がりそうで売買してしまう」——そんな悩みを抱えているFX初心者の方は多いのではないでしょうか。実は、相場には一定の「リズム」や「パターン」が存在し、それを体系化したのがエリオット波動理論です。
この理論をマスターすれば、今チャートがどの局面にいるのか、次にどんな動きが来やすいのかを予測できるようになります。「トレンドの途中なのか、終盤なのか」がわかるだけで、無駄なエントリーを大幅に減らせるのです。
本記事では、エリオット波動理論の基礎から実践的な活用法まで、初心者の方にもわかりやすく解説していきます。難しそうに見える波動理論も、基本構造さえ押さえれば意外とシンプルです。ぜひ最後までお読みいただき、あなたのFXトレードに役立ててください。
エリオット波動理論とは?相場の「リズム」を読む分析法
エリオット波動理論は、1930年代にアメリカの会計士ラルフ・ネルソン・エリオットが発見した相場分析の手法です。彼は膨大な株価データを研究する中で、相場の動きには一定の「波のパターン」が繰り返し現れることを発見しました。
エリオット波動理論の核心——相場は「群衆心理」で動く
なぜ相場に規則的なパターンが現れるのでしょうか。その答えは「人間の心理」にあります。相場を動かしているのは、結局のところ人間の売買行動です。そして人間の心理には、時代や国を超えて共通するパターンがあるのです。
たとえば、上昇トレンドの初期には「まだ上がるかわからない」と懐疑的な投資家が多く、買いは控えめです。しかし上昇が続くと「乗り遅れたくない」という心理が働き、買いが加速します。そしてピーク付近では「まだまだ上がる」と楽観的になりすぎた投資家が高値掴みをしてしまう——こうした心理の連鎖が、チャート上に規則的な波として現れるのです。
エリオット波動理論は、この群衆心理の移り変わりを「波」として視覚化したものと言えます。だからこそ、80年以上経った現在でもFXや株式市場で有効に機能しているのです。
エリオット波動理論を学ぶメリット
エリオット波動理論を学ぶことで、FX初心者でも以下のようなメリットを得られます。
- 相場の現在地がわかる——今がトレンドの初期なのか、中盤なのか、終盤なのかを判断できる
- 次の展開を予測できる——現在の波動から、次にどんな動きが来やすいかを推測できる
- 損切り・利確の根拠が明確になる——波動の構造から、適切な決済ポイントを論理的に設定できる
- 無駄なエントリーを減らせる——トレンドの終盤で飛び乗るような失敗を防げる
ただし、エリオット波動理論は「絶対に当たる予測ツール」ではありません。あくまで「確率的にこうなりやすい」という傾向を示すものです。この点を理解した上で、他のテクニカル分析と組み合わせて使うことが重要です。
上昇5波・下降3波の基本構造を理解しよう
エリオット波動理論の最も基本的な概念が「上昇5波・下降3波」です。これは、トレンド相場が合計8つの波で1つのサイクルを形成するという考え方です。初心者の方は、まずこの基本構造をしっかり頭に入れてください。
推進波(1波〜5波)——トレンド方向に進む5つの波
上昇トレンドの場合、メインの上昇方向に向かう波を「推進波」と呼びます。推進波は5つの波で構成されており、それぞれに番号が振られています。
| 波動 | 方向 | 役割 |
|---|---|---|
| 第1波 | 上昇 | 新しいトレンドの始まり |
| 第2波 | 下落(調整) | 第1波に対する押し目 |
| 第3波 | 上昇 | 最も力強い上昇(通常最長) |
| 第4波 | 下落(調整) | 第3波に対する押し目 |
| 第5波 | 上昇 | トレンドの最終局面 |
重要なポイントは、5つの波のうち「1波・3波・5波」がトレンド方向への動き(インパルス)、「2波・4波」がそれに対する調整(コレクション)だということです。つまり、上昇トレンドでも一直線に上がるわけではなく、「上げ→押し→上げ→押し→上げ」というリズムで進行するのです。
修正波(A波〜B波〜C波)——トレンドに逆行する3つの波
5つの推進波が完了すると、次は「修正波」と呼ばれる調整局面に入ります。修正波は3つの波(A・B・C)で構成されます。
| 波動 | 方向 | 役割 |
|---|---|---|
| A波 | 下落 | 調整の始まり |
| B波 | 上昇(戻り) | A波に対する反発 |
| C波 | 下落 | 調整の完了 |
修正波は、それまでの上昇トレンドに対する「利益確定」や「見直し」の動きと考えるとわかりやすいでしょう。5波で上昇しきった相場が、一度調整してから次の動きに移るのです。
なぜ「5波と3波」なのか?——フラクタル構造の秘密
「なぜ上昇が5波で、下降が3波なのか?」と疑問に思う方もいるでしょう。これには、相場の「フラクタル構造」が関係しています。
フラクタルとは、全体と部分が同じ構造を持つことを指します。エリオット波動理論では、大きな1つの波の中に、さらに小さな5波や3波が入れ子状に含まれていると考えます。
たとえば、日足チャートで見た「第3波」を、4時間足チャートで拡大して見ると、その中にもさらに小さな「5波構造」が確認できることがあります。このフラクタル構造が、相場のあらゆる時間軸で繰り返されているのです。
トレンド方向(推進波)が5波なのは、相場が「より複雑で力強い動き」をするためです。一方、調整(修正波)が3波なのは、あくまで「一時的な反動」であり、推進波ほど複雑な構造にならないからです。
各波動の特徴と見分け方
エリオット波動理論を実際のトレードで活用するには、各波動の「性格」を理解することが欠かせません。それぞれの波には特徴的な動きがあり、これを知っておくことで「今どの波にいるのか」を判断しやすくなります。
第1波——懐疑の中で始まるトレンドの芽生え
第1波は、新しいトレンドの始まりを告げる波です。しかし、この段階ではまだ多くの投資家が「本当に上がるのか?」と懐疑的です。前のトレンド(下降トレンド)の印象が強く残っているため、「また下がるだろう」と考える人が多いのです。
そのため、第1波は比較的小さな動きになることが多く、出来高もそれほど増えません。第1波をリアルタイムで正確に捉えるのは難しく、多くの場合は後から「あれが第1波だった」と認識されます。
第2波——試される我慢の時間
第2波は、第1波に対する調整(押し目)です。「やっぱり下がった」と思った投資家が売りを出すため、価格は下落します。
第2波の特徴として、第1波の上昇幅の「50%〜61.8%」程度まで押すことが多いとされています。ただし、絶対に第1波の起点を下回ってはいけないというルールがあります。もし第1波の起点を割り込んだ場合、それは第1波ではなかったと判断を修正する必要があります。
第3波——最も力強く、最も利益を狙いやすい波
第3波は、エリオット波動の中で最も重要な波です。通常、5つの推進波の中で最も長く、最も力強い動きになります。
なぜ第3波が最も強いのでしょうか。それは、この段階で「トレンドが本物だ」と多くの投資家が認識し始めるからです。第1波で疑っていた人たちも「乗り遅れたくない」と買いに参加し、買いが買いを呼ぶ展開になります。
FXトレードで利益を狙うなら、この第3波を捉えることが最も効率的です。第2波の押し目を待って、第3波の初動でエントリーするのが理想的なシナリオです。
重要なルールとして、第3波は「1波・3波・5波の中で最も短くなってはいけない」とされています。つまり、第3波が極端に短い場合は、波動のカウントが間違っている可能性があります。
第4波——利益確定の調整局面
第4波は、第3波の上昇に対する利益確定の動きです。第3波で大きく上昇した後、一部の投資家が「そろそろ利確しよう」と売りを出すため、価格は調整します。
第4波の重要なルールは、「第1波の高値を下回ってはいけない」ということです。もし第4波が第1波の高値を割り込んだ場合、エリオット波動のカウントが間違っている可能性が高いです。
また、第4波は第2波とは異なる調整パターンになることが多いとされています。第2波がシンプルな「ジグザグ型」なら、第4波は複雑な「フラット型」や「トライアングル型」になりやすい傾向があります。
第5波——トレンドの最終章
第5波は、推進波の最終局面です。この段階では、メディアでも「上昇トレンドが続いている」と報道され、一般投資家も「今買わないと損だ」と考えるようになります。
しかし、賢明な投資家はこの段階で利益確定を進めています。なぜなら、第5波が終われば、修正波(ABC波)による調整が始まることを知っているからです。
第5波の特徴として、第3波ほどの勢いがないことが多いです。また、RSIやMACDなどのオシレーター系指標で「ダイバージェンス」(価格は高値更新しているが、指標は下落している状態)が発生しやすいのも第5波の特徴です。
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5つの推進波が完了すると、修正波(A・B・C波)の局面に入ります。
A波は、上昇トレンドの終了を告げる最初の下落です。しかし、多くの投資家はまだ「押し目だ」と考えており、ここで買いを入れる人も少なくありません。
B波は、A波に対する反発です。「やっぱりまだ上がる」と思った投資家が買いを入れるため、価格は一時的に上昇します。しかし、この上昇は「ダマシ」であることが多く、B波の高値は第5波の高値を超えないのが一般的です。
C波は、修正波の最終局面です。B波で「まだ上がる」と期待した投資家が失望売りを出すため、価格は大きく下落します。C波はA波と同程度か、それ以上の下落幅になることが多いです。
エリオット波動の実践的な使い方とフィボナッチ活用
エリオット波動理論を実際のFXトレードで活用するには、「波動のカウント方法」と「フィボナッチ比率との組み合わせ」を理解することが重要です。
波動カウントの基本——3つの絶対ルール
エリオット波動をカウントする際には、以下の3つのルールを絶対に守る必要があります。これらに違反するカウントは間違いです。
- 第2波は第1波の起点を下回らない——第2波が第1波の安値を割り込んだら、それは第1波ではない
- 第3波は最短にならない——1波・3波・5波の中で、第3波が最も短くなることはない
- 第4波は第1波の高値を下回らない——第4波が第1波のエリアに入り込んだら、カウントが間違っている
これらのルールに加えて、「ガイドライン」と呼ばれる傾向も存在します。ガイドラインは絶対ではありませんが、カウントの妥当性を判断する助けになります。
- 第3波は通常、第1波の1.618倍以上の長さになる
- 第2波と第4波は、異なる調整パターンになりやすい(オルタネーション)
- 第5波は第1波と同程度の長さになることが多い
フィボナッチ比率を使った波動分析
エリオット波動理論とフィボナッチ比率は、切っても切れない関係にあります。各波動の長さや調整幅は、フィボナッチ比率(23.6%、38.2%、50%、61.8%、100%、161.8%など)に基づいて予測できることが多いのです。
第2波の調整目安
第2波は、第1波の上昇幅に対して50%〜61.8%程度まで押すことが多いです。38.2%で止まる「浅い押し」もありますが、61.8%を超える「深い押し」の場合は、第1波のカウントを見直す必要があるかもしれません。
第3波の目標値
第3波は、第1波の長さの161.8%〜261.8%程度になることが多いです。たとえば、第1波が100pipsの上昇だった場合、第3波は161.8pips〜261.8pips程度の上昇が期待できます。
第4波の調整目安
第4波は、第3波の上昇幅に対して23.6%〜38.2%程度の調整になることが多いです。第2波よりも浅い調整になる傾向があります。
第5波の目標値
第5波は、第1波と同程度の長さになることが多いです。また、「第1波の起点から第3波の終点」までの距離の61.8%を、第4波の終点に加えた値が目標になることもあります。
よくある間違いと注意点
エリオット波動理論を実践で使う際、初心者が陥りやすい間違いがいくつかあります。
1. 後付けバイアスに注意
エリオット波動は、過去のチャートを見ると「きれいに5波・3波になっている」ように見えます。しかし、リアルタイムで波動をカウントするのは、はるかに難しいのです。「後から見れば当然」でも、その場では複数の解釈が成り立つことがほとんどです。
2. 無理に波動をカウントしない
すべての相場がきれいな5波・3波になるわけではありません。特にレンジ相場や、複雑な調整パターンでは、エリオット波動のカウントが困難になります。無理に当てはめようとせず、「わからない時は見送る」という姿勢が大切です。
3. 複数のシナリオを持つ
エリオット波動のカウントには、常に複数の解釈が存在します。「メインシナリオ」と「代替シナリオ」を持っておき、相場の動きに応じて柔軟に修正していく姿勢が必要です。
エリオット波動を使ったトレード戦略
エリオット波動理論を理解したら、次は実際のトレードでどう活用するかを考えましょう。ここでは、初心者でも取り組みやすい具体的な戦略を紹介します。
狙い目は「第3波」——最も効率的なエントリーポイント
エリオット波動理論を使ったトレードで最も狙いたいのは、第3波の初動です。第3波は最も長く、力強い動きになりやすいため、利益を最大化しやすいのです。
具体的なエントリーの流れは以下の通りです。
- 下降トレンドからの反発(第1波の可能性)を確認する
- その後の調整(第2波)を待つ
- 第2波がフィボナッチの50%〜61.8%付近で止まったことを確認する
- 反転の兆候(陽線の出現、サポートラインでの反発など)を確認してエントリー
- 損切りは第1波の起点のやや下に設定
この戦略のメリットは、リスクリワード比が非常に良いことです。損切り幅は第2波の底から第1波の起点までと限定的ですが、利益目標は第3波全体を狙えるため、リスク1に対してリワード2〜3以上が期待できます。
「第5波の終点」で利益確定——欲張りすぎない出口戦略
第3波でエントリーした後、どこで利益確定するかも重要です。エリオット波動理論に基づけば、第5波の終点が一つの目安になります。
第5波の終点を予測する方法としては、以下のアプローチがあります。
- 第1波と同程度の長さを、第4波の終点から計測する
- 第1波の起点から第3波の終点までの距離の61.8%を、第4波の終点に加える
- RSIやMACDでダイバージェンスが発生したら警戒する
ただし、「第5波がどこで終わるか」を正確に予測するのは難しいです。そのため、第5波に入ったと判断したら、部分的に利益確定を進めるのも賢明な戦略です。
修正波(ABC波)でのトレード——上級者向けの逆張り戦略
5波が完了した後の修正波(ABC波)でもトレードは可能ですが、これは上級者向けの戦略です。
修正波は推進波に比べて予測が難しく、複雑なパターン(ジグザグ、フラット、トライアングルなど)が出現します。初心者のうちは、修正波でのトレードは避け、次の推進波を待つことをおすすめします。
もし修正波でトレードする場合は、C波の終点を狙う戦略が比較的取り組みやすいでしょう。C波がA波と同程度の長さになることが多いため、A波の長さを基準に目標値を計算できます。
マルチタイムフレーム分析との組み合わせ
エリオット波動理論の精度を高めるには、複数の時間軸でチャートを分析する「マルチタイムフレーム分析」が有効です。
たとえば、日足チャートで「現在は第3波の途中」と判断したら、4時間足や1時間足で具体的なエントリーポイントを探します。上位足でトレンド方向を確認し、下位足でタイミングを計るというアプローチです。
また、日足の第3波の中には、4時間足レベルの「5波構造」が含まれていることがあります。このフラクタル構造を意識することで、より精度の高い分析が可能になります。
上位足と下位足の関係性について詳しく知りたい方は、マルチタイムフレーム分析(MTF)|上位足を見る重要性の記事も参考にしてください。
まとめ
エリオット波動理論は、相場の「リズム」を読み解くための強力なツールです。この記事で解説した内容を振り返ってみましょう。
- エリオット波動理論の基本——相場は群衆心理によって動き、その心理変化が「波」として現れる
- 上昇5波・下降3波——トレンドは5つの推進波と3つの修正波で1サイクルを形成する
- 各波の特徴——第3波が最も長く力強い。第5波はトレンドの最終局面でダイバージェンスが出やすい
- 3つの絶対ルール——第2波は第1波の起点を割らない、第3波は最短にならない、第4波は第1波の高値を割らない
- フィボナッチとの組み合わせ——各波の長さや調整幅はフィボナッチ比率で予測できることが多い
- 狙い目は第3波——第2波の押し目を待って、第3波の初動でエントリーするのが効率的
エリオット波動理論は奥が深く、完全にマスターするには時間がかかります。しかし、基本的な「5波・3波」の構造と各波の特徴を理解するだけでも、FXトレードの精度は大きく向上するはずです。
まずはデモトレードや過去チャートで波動のカウントを練習し、徐々に実践に取り入れていってください。
エリオット波動理論をより深く学びたい方には、【FX おすすめ書籍レビュー】『エリオット波動研究』と『デイトレード』勝てる分析の決定版ガイド本の記事で紹介している書籍がおすすめです。
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